心のつぶやきが人生を決める!

「不可能は、自らの力で道を切り拓くことを拒否した臆病者の言葉だ。不可能は事実ではない。先入観だ。不可能は誰かが決めつけることではない。可能性だ。不可能は一時的なものだ。不可能は、ありえない」モハメド・アリ

人間は、常に何かを考えている。これは諸刃の剣であり、幸福にも災いにも転ぶ。思考が状況を正しくとらえていることもあるが、そうでない場合が非常に多いのだ。そして、無意識のうちに考えている時間が圧倒的だ。私たちの思考は、単語、アイデア、文章として、果てしなく流れ続けている。スポーツ解説者さながらに、自分の人生の概要報告を、間断なく流している。

一秒たりともストップして、コメントの内容や強調するべき箇所、言葉選びの指摘を受けることがないのだ。複数の研究によると、平均的な人間の頭のなかには、一日に一万語以上の語句・文章がめぐっているそうだ。

それが、この記事のテーマである「心のつぶやき」だ。たいていの人は、「思考はコントロールできる」という事実に、言われるまで気づかない。当たり前のことなのに、忘れているのだ。あなたが今、脅迫に遭っていたり、身の危険にさらされているなら別だが、 安全な環境にいるなら、たいていの人は、考える内容を自分で決めることができる。これは実は、すばらしいことなのだ。

思考のコントロールを訓練すれば、かなりの程度まで、感情までも操作できるようになるからだ。「すること」「しないこと」を決めるのは感情だ。だから、自分の行動の舵取りができるようになる。楽しくて楽な仕事を、骨が折れる仕事より優先するのはたやすい。この判断を調整するのは、あなたの思考と感情である。やる気があり、刺激を受け、熱心に取り組んでいる、と感情が認識すれば、自動的に、必要以上の仕事ができるのだ。

心のつぶやきは、大きく三つのカテゴリーに分けられる。

1あなたが使う単語

2あなたから自分自身への問いかけ

3あなたが日常生活で自分に語りかける

「パワーステートメント」「私はそんな単語は使わない」ひとつ目の心のつぶやきから順に説明していこう。あなたが使う単語は、感情に影響を与える。感情は行動に影響し、それが正しい/間違った選択につながるのだ。私がよく引き合いに出すのは、第二次世界大戦の軍人で故人のグッナール・ソンステビだ。お目にかかった折りに、ひんぱんに講演会をしていると話してくれた。

「疲れませんか?そのお歳では」と、私はたずねた。「疲れるですって?私はそんな言葉は使いませんよ」彼の経験上、「疲れた」と言ったとたん、疲れが増すのだそうだ。多くの人が「疲れた」という単語をしょっちゅう使う。長い一日の仕事が終わり、帰宅して家族の前で「疲れた」と言う。

すると何が起きるか?この単語と連動して、少し落ち込んでしまうのだ。言葉が即座に影響を与えることに、気づいていない人が多い。ネガティブな言葉はたちまちネガティブな気持ちを生む。飲み物の入ったコップを持った子どもに注意するときに「こぼさないで(Don't spill)」と言うと、かえってこぼしやすくなる、という話を聞いたことがある人もいるだろう。

脳が「~しないで(don't)」を排除し、「こぼす(spill)」という単語だけを認識するからだ。その結果、「こぼす」ことに意識を集中してしまうのだ。これは間違った集中の仕方である。常に「何をしないか」ではなく「何をするか」に意識を傾けるべきなのだ。「調子はどう?」とたずねられると、普通は「いいよ」と答える。

形式的な挨拶なので、そう返事をされて気を悪くする相手はいないだろう。しかし「いいよ」から一歩進んで「すごくいい」「最高です」「素晴らしい」と返事をすると、あなたの思考に新しい変化が刻み込まれる。にっこり笑ってそう言うと、「ワーオ、いいね!どうしたの?話を聞かせてよ」と返ってくる。「実はね、最高なんだよ、というのも……」と、あなたは素晴らしい理由について説明をはじめることになる。「最高」と言ったからには、それを裏づける事柄を探す必要がある。

すると、意外と見つかるのである。どんな人でも、「すごくいい」と言えるだけの材料をひとつやふたつ持っているものだ。最高の気分で出歩いていないときでも、こんな返事の仕方は、自分の軌道修正のツールとして活用することができる。

自分への質問が成功するか失敗するかを決めてしまう!

二番目の心のつぶやきは、「日常的な自分への問いかけ」だ。これは、どんな職業・活動をしている人にも関連がある、非常に大切なテーマである。覚えておいてほしいのは、「どうして私は成功しないの?」と自問すると、脳が即座に成功できないネガティブな裏づけを探しはじめること。「プロジェクトですばらしい成功をおさめるにはどうすればいい?」と問いかけると、脳はその答えを探しはじめる。問いかけ次第で、結果も気分も大きく変わるのだ。

「私の長所は?」「私の強みは?」「自分のどんなところが誇らしい?」スキルの高い人は、自分にそんな質問をしょっちゅうする。問いかけることで、自信が高まるのだ。自信は正しい質問によって形作られる、とさえ言ってもいい。あなたは自分にポジティブな感情を与える質問をすることだけを意識すればいいのだ。

ところが、実際にはこの逆をする人が多い。自分の弱点や恐れを確認するような質問をしてしまうのだ。クロスカントリースキー選手のクリスティン・ストルメル・スタイラは、重要な大会で四位の成績が多く、メディアから「永遠の四位」というレッテルを貼られている。

しかし彼女は決して「なぜ私はいつも四位止まりなの?」と自問してはいけない。脳が四位止まりの理由を探そうとするので、ネガティブな答えしか得られないからだ(「強さが足りない、勝者の本能がない」など)。彼女は「どうすれば一番になれる?」と自問すべきなのだ。心のつぶやきを意識して、パフォーマンスを劇的に向上させたいなら、朝の目覚ましが鳴った時点から、勝負は始まっている。目覚ましを使って起きる人は、たいてい、もっと寝ていたいものだ。

「まだ疲れてるから、あと五分だけ寝ようかな?」と、目を覚ました瞬間に思うかもしれない。そんな問いかけをすれば、結果は見えている。これは質問が悪い。人間の感情は、質問が誘導する選択肢へと引き寄せられてしまうからだ。疲れている、だから寝なおしたい、という答えが導き出されてしまう。

そんなときは、心のつぶやきによって、感情をコントロールすればいい。あなたの感情は、五感だけではなく、思考回路からも影響を受ける。感情をコントロールするためには、口に出す言葉に注意を払わなければならない。目覚ましの例を続けよう。目覚ましが鳴ったときの反応について、新しい習慣をものにするには、どうすればよいか。行動は一三回くり返せば習慣になる。

このことは、数々のデータにより証明されている。習慣化すれば、行動が自然な動作の一部に格上げされ、特別に意識しなくてもできるようになるのだ。

では、新しい習慣を身につけるために、何をすればいいか。まずは「意識するための目印」を作る。たとえば、時計の置き場所を変えたり、携帯電話のアラーム音を変えたりする。次に、自分への問いかけを変える。正しい答えを導く質問をするのだ。「今日はこれから何をしようか?」と、朝一番に問いかける。それを二週間、毎朝くり返せば、目覚まし時計が鳴った瞬間に、自動的にこの質問が頭に浮かぶようになる。

それを二週間、毎朝くり返せば、目覚まし時計が鳴った瞬間に、自動的にこの質問が頭に浮かぶようになる。こんな簡単なことで、と思うかもしれないが、実際に効果がある。脳は、質問の答えを探したがるからだ。あなたが答えを知らなくても、脳は答えを探すために動き続けるのだ。

だから、あなた自身がようやく小さな答えに行きついたとき(「まずシャワーを浴びて、ランチ、夜は映画」)、脳内ではすでに一〇パーセント先まで準備が進んでいる。あなたが発した質問が、積極的な反応を要求したおかげだ。まずは、朝起きて最初の自分への問いかけを変えるべきだ。「あと五分寝てもいい?」ではなく、「今日は何をしよう?」と。さらに、自分のゴールを考え、人生を俯瞰で見るようにすれば、本書のなかの三大ツールを一度に使うことになり、準備が二〇パーセント増になるだろう。

これによって、自信がアップし、誇らしい気分で目を覚ますことができる。寝坊して朝食を抜き一五分遅れのスタートを切るのとは、玄関を出たときの精神状態がまるで違うはずだ。ちなみに私は、毎日のやる気を高めるために、オフィスに早めに到着するようにしている。早朝から会議があるときは、ノルウェー在住のメンタルトレーナーのなかで私が仕事一番乗りだぞ、と自分に言い聞かせている。

・重要な会議の直前、あなたは何を考えている?

・年に一度のマラソン大会の直前は?

・気難しい社員と面倒な話し合いをするときは?

ネガティブな思考になる人が多いはずだ。大変そうだ、難しそうだ、と。会議で気の利いた発言ができなかったらどうしよう?最初の一〇キロメートルで身体が動かなくなったら?相手が怒り出したらどうする?ネガティブな思考を持つなとは言わない。

私が言いたいのは、「正しく思考する」ことの大切さだ。こういう状況では、相手からの反論や、課題への取り組みに失敗するなど、最悪の事態を想像しがちになる。

おすすめの記事