問題に取り組む前に必ずすべきこと

問題に取り組む前に必ずすべきこと私は、業績を認めているという信頼感を高めるために、さらに質問をかさねた。問題に取り組む前に、ポジティブな感覚を持たせることが大切だ。

だから最初に、相手が誇りに思うことを話させると、必ずうまく流れに乗れる。「問題に取り組む前に、もっとあなたについて知る必要があります」と、私は言った。

「初回は、その話だけにしましょう。次回以降、ピッチとあなたへの課題に取り組みます。あなた自身について、もう少し聞かせてくれませんか?ご出身は?どこで育ちましたか?学校は?兄弟や姉妹はいらっしゃいますか?ご両親は健在ですか、離婚されていますか?ご両親との関係は?友人のなかでは、どんな役割ですか?おとなしくて用心深いタイプですか、それとも親分肌ですか?学生時代の話を聞かせてください。これまで選択してきたことと、その理由を教えてください」

彼は、安全で調和の取れた子ども時代について話してくれた。デンマークの小さな町で育ち、財力のある両親と妹がいる。友人はいたが、時々、少し疎外感があった。学士号と修士号をアメリカで取得した。アメリカでは大学でアメフト部にいたが、スポーツマンタイプではないので、試合ではたいていベンチで控えていた。

「ニルス、あなたはどんな人間ですか?もしも私があなたのお母さんに電話をして、あなたらしさについて教えてください、とたずねたら、どんな答えが返ってくるでしょう?」

そうたずねると、ニルスはためらいながらも、少しずつ答えてくれた。志が高い。目的志向。勤勉。きちょうめん。親切。引っ込み思案。

「あなたにとって、理想の一日とは?何をしていますか?」そうたずねると、彼は、子どもたちと一緒に過ごすと答えた。朝、子どもたちとたっぷり遊び、そのあと身体を動かして、カフェで新聞を読みながらダブルエスプレッソでひと休み。勤務を終えて帰宅したら、夜は街一番のおいしいレストランで家族でディナー……。

だが、実際には、仕事が忙しく、朝七時には会社にいるし、夜九時までに帰宅できることはめったにないそうだ。「ニルス、あなたの価値観について教えてください」「価値観?どういう意味ですか?」「つまり、人生において、何が一番重要だと思っているか、です。あなたを導く指針は?あなたの枠組みを構成するものは?」しばらくやりとりをした後に、彼は、自分の健康、妻、愛情、子ども、家族、友人、信頼、成長と分かち合い、という結論に達した。

信頼という意味では、人生のさまざまな局面のすべてで、頼りがいがあり誠実で常識のある人と思われることを、極めて重要視していた。他人に信頼されたいという思いと同時に、自分を信じたいという気持ちがあった。

また、常に成長を続けることにも大きな価値を置いていた。学び続けること、挑戦すること、知識を得ること、もっと人間的に成長し、好奇心と探究心を絶やさないこと。最後の価値観である、他人と喜びを分かち合い、人の役に立ちたい、という気持ちは、ずっと以前から持ち続けてきた。必要な人に援助したいという気持ちも。彼はそこに人生の意義を見出していた。

「あなたの人生のピークはいつですか?あらゆることが最高にうまくいっていたときは?」ニルスが静かに笑った。「今の銀行で働きはじめて二、三年たった頃ですね。今のポジションをオファーされたのが誇らしくて。選ばれたことが誇りでした。これでついに、自分が情熱を傾ける分野の仕事ができる、と。私はたちまち成果を出しました。現在の妻と恋愛中でしたし、しゃかりきに勉強しました。身体も引き締まっていましたし、運動をする時間がありました。そうですね、あの頃はよかったなあ」

「当時は価値観に沿った生き方をしていたんですね」私は言った。「おっしゃるとおりです」「あなたには夢がありますか?」ニルスは私を見つめ、こう言った。

「ええ、私には夢があります。こうやって話しているうちにはっきりしてきました。私の夢は幸せになることです。自分に満足することです。そうすれば、もっといい夫、父親になり、自分の価値観に沿った生き方をし、ピッチをうまく扱えると思います」「と言いますと?」「つまり、私はもっと自分に満足する必要があるんです。いろんな面で私は非常に恵まれていますし、成功していますが、何かが欠落しています。思うに、自己評価が低いんです。私はもっと自分に安心したい。他人の評価をあまり気にかけずにね。もう少し肩の力を抜きたい。たまには『いいじゃないか』と言いたいんです。人生というものは、多少は厳しい。ピッチのようなときに、それが露呈するわけですよ」

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