かけた時間の分だけ成長するのはスポーツもビジネスでも同じ

世界トップクラスのスポーツ選手はたいてい、幼少期にトレーニングを始めている。

スポーツ以外でも、専門性が高く、やった分だけ習熟するような分野では、同様の現象が見られる。熱心に長時間の鍛錬を積んだ者が、最高の結果を出せるのだ。ただし、練習量と成功の相関性が明確なのは、やはりスポーツの分野である。ビジネスはいろいろな面でスポーツよりも複雑になりがちだ。

世界トップレベルの投資家になりたい場合、世界トップのテニス選手になるよりも、日々の訓練の「内容」が不鮮明になりがちだからだ。金融界の成功者たちが集合して、「四〇歳で世界トップレベルの投資家になるために、五歳でさせるべきこと」の戦略を立てようとしても、さまざまに意見が分かれるだろう。

「努力を重ねて毎年飛躍的に成長すべき」という以上に具体的な対策が立てにくい。

ところが、トップレベルのプロテニス選手が集まって、二〇年後の世界チャンピオンを目指して五歳児にさせるべきことを話し合えば、おおむね意見は一致するはずだ。ふたつのシナリオの大きな違いは、テニスが極めて専門性の高い競技であることだ。主な動作は、ボレー、サーブ、バックハンド、フォアハンド、スマッシュだ。これらを何千回も練習した人は、練習が数回の人に比べてはるかに有利だ。この差を縮めるのは難しい。

ところが投資家には、幅広い分野のスキルと知識が必要とされる。数字と統計。財務とマクロ経済、ミクロ経済、会計学。政治学や社会学、歴史の理解も必要だ。加えて、信頼できる幅広い人脈を築けば有利に働くだろう。一万時間の鍛錬に盛り込む内容も変わってくる。

音楽家やスポーツ選手なら、単純に積算時間を計ればいいが、ビジネスの場合は、かけた時間と達成度が必ずしも比例しない。それでも、ある程度まで明確にすることは可能だ。

「私が身につけるべき知識は何だろう?」「上達するには、何をすべき?」「集中するために必要なのは?」こんな自問ができる時点で、すでにあなたは鍛錬を積んできたはずだ。積み重ねた経験をたっぷりと活用すればいい。

トレーニングするとき意識すること

そして、トレーニングをするときには常に目的を意識すること。ゴールに近づくため、ゴールに到達するために何が必要なのかを考え続けるべきなのだ。

生まれ持った素質が、特定の分野で有利に働くことも確かにある。バスケットボールでは、背が高いと明らかに有利だ。すぐれた水泳選手を目指すなら、手足が大きいほうがいい。生まれ持った声が、歌手になる夢を後押しすることもあるだろう。リーダーに適した性格や資質というものも存在する。

外交的で、エネルギッシュで、魅力的で、説得力があり、自信に満ちている人は、リーダーとして成功する可能性が高い。好きなことをやれている人の場合、長期間にわたって自分を律する能力と、目標に向けた不屈の頑張りが、どこまで高みに行けるかを決める。

リーダーを目指す場合もそうだ。好奇心にあふれ、意志と欲望の強い人は、すぐれたリーダーになれる。はじめは必要な資質に欠けていても、自分の問題に気づき、フィードバックを受け入れ、コンフォートゾーンから脱出して行動を起こすことで、すぐれたリーダーに生まれ変わった人を、私は大勢見てきた。

周囲の予想をくつがえして、ダントツの成功をおさめる人もいる。元バスケットボール選手のマグジー・ボーグスもそのひとり。身長一六〇センチで、NBA史上もっとも低身長の選手と言われた彼は、若い頃、バスケをあきらめろと周囲の全員から言われた。背が低すぎるから、お前には無理だと。

しかし、ただひとり、当のマグジーだけは自分のことを信じていた。彼にとってバスケットボールに必要なのは、身長ではなくひたむきさだった。世界最強のバスケットリーグで合計一四シーズンをプレーした後に、引退したマグジーは、自伝にこう書いている。

「僕は常に、コートで一番背の低い男だった。だから、身長一八〇センチの選手の戦い方は、さっぱりわからない。僕にわかるのは、ボールは宙に浮いているより床についている時間のほうが多いこと。床はマグジーの領域だ。ここは誰にも譲らなかった」

 

おすすめの記事