常に改善を続けるトヨタ

自動車製造業のトヨタは、長期にわたり「たゆまない改善」を信条にかかげている。会社にとってだけではなく、従業員個人にとっても素晴らしい信条だと思う。

常によくし続けなさい、という目標は、とてつもなく大きな原動力になる。自分が楽でいられる場所、つまりコンフォートゾーンを脱出し、毎日毎週、忍耐力を育むことになる。常に新しいメソッドやテクニックや機材を試しているスポーツ選手や、新しい市場をリサーチする企業に共通するのは、進化を執拗に願う思いと細部へのこだわり、そして進歩に照準を合わせることだ。

逆境を上手に利用しプラスにする!

アップル社の創設者スティーヴ・ジョブズは、景気の低迷を逆手に取って、iPodやiTunesといった革新的な商品を開発した。スポーツの世界では、こういった例が多くみられる。バルセロナオリンピック金メダリストでもあるスウェーデンの伝説的な卓球選手ヤン=オベ・ワルドナーは、従来のラケットの持ち方をやめ、親指と人差し指で持つことで、革命的なサーブをあみだした。

ラケットへのボールの当たりが劇的に柔軟になり、スピンに磨きがかかったのだ。アメリカの男子走り高跳び選手リチャード・ダグラス・フォスベリーは、一六歳のときに新しい技をあみだした。従来の跳躍スタイルが複雑すぎると感じ、右足で踏み切ってから、頭から先に後ろ向きにバーに向かう「背面跳び」を始めたのだ。

この新しい技を使って、フォスベリーはNCCAとアメリカ合衆国のオリンピックの選考会で優勝。一九六八年のメキシコオリンピックで金メダルを獲得し、オリンピック新記録を更新した。彼の跳躍スタイルは「フォスベリー・フロップ」と呼ばれ、現在では主流となっている。砲丸投選手のパリー・オブライエンは、一九五〇年代に新しい投法を駆使しオリンピックで金メダルを二度獲得し、世界記録を一七回塗りかえた。

彼は、投げる方向に背を向けた姿勢から一八〇度回転して勢いをつけ、砲丸を投げた。当時の選手が使っていた標準的な投法は、片手で後方から前方に押し出すように投げるもので、効率がよいとは言えなかった。

その証拠に、オブライアンは新しい技を使って一七回の世界新記録を樹立し、今日では、ほぼすべての選手がこの投法を採用している。アメリカ人スキー選手のビル・コッホは、一九八〇年代半ばに片足で滑走し、クロスカントリースキーに革命を起こした。これらの事例に共通するのは、こうしたアイデアが本番ではなく「段取り中」の局面で生まれたということだ。

試合中に突然ひらめいたのではなく、綿密な計画のもとに膨大な時間のトレーニングを行った結果の産物なのである。スポーツ界でのこういった革命は、一種のパラダイムシフト(ある時点までは当然と考えられていた認識や思想が劇的に変化し、元には戻らないこと)である。長期間、同じ道をさ迷い歩いた末に、新しい方向に大きく跳びだす感覚だ。新しいアイデアが、ある日突然、天から降ってくるなら楽だが、そんなことはめったにない

アイデアもまた、仕事の業績と同じく、目的を持ったトレーニングを長期間積み重ねて、調整と試行錯誤を重ねるなかで生み出されるものなのだ。

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